先進国の責務 (哲祥)

先日のインド洋巨大地震で起きた莫大な津波被害に関連して、日経に「日本国内の備えは大丈夫か」というような社説が載っていたんですが、なんか違和感。
太平洋には既に日本とアメリカが協力して作った地震津波観測網と警報システムがあり、その中の島嶼諸国にもそれを利用して警報が送られる段取りになっています。
しかしインド洋にはそんなものはなかった。
気象関連の予測や警報を行うにはかなりの科学水準や、その運用者、スパコンを備えたシミュレーション設備、そして潤沢な費用が要求されます。とすると、あの地域をカバーするのは位置的にも地政学的にも日本の役目だったんじゃないかなあ、と。
ODAをどうしようもない地元企業に垂れ流し続けるくらいなら、そのお金で広域観測網を作っておけばよかったのに。そうすれば数万人が救えただろうに……。
そう思ってたらこんな記事を発見。

インド洋津波>「日本の防波壁が首都を守った」モルディブ
 
 【マレ(モルディブ)福本容子】「日本の支援がなかったら、マレはなくなっていただろう」――。モルディブの人口の約3分の1が住む首都マレでは、日本からの公的支援で建設された防波壁が、島を津波の大惨事から守ってくれたとの見方が広がっている。海抜1メートル程度しかない約1200の島々から成る同国は地球温暖化の進行で国全体が沈みかねないとの不安を抱え、常に海面上昇への恐怖と隣り合わせで生きてきたが、88年以降、進めてきた首都の護岸工事が壊滅的な被害を回避するのに貢献したと、島民は口々に語った。
 災害対策本部の置かれたマレ市のイスカンダール小学校校庭でボランティア活動を指揮する元オリンピックマラソン選手のフセイン・ハリームさん(35)。彼になぜマレは3分の2が冠水しながらも死者が出なかったのだろうと尋ねた。するとすぐに答えが返ってきた。「10年以上かけて作った防波壁が大いに助けになった。日本の援助のおかげだと聞いている」
 その防波壁を見たくて市南部の海岸まで案内してもらったタクシー運転手のアハメド・シャフィールさん(30)も「日本が作ってくれたあの壁がなかったら今ごろマレはもうない」と語り、「助けてくれた日本人からこんな時に金を受け取るわけにはいかない」と決して料金を言ってくれなかった。
 大統領府によると、日本はモルディブ最大の援助供与国で13年をかけた防波壁工事の費用6600万ドルの主要部分を日本の援助が支えたという。南部の海岸通りには、「日本とモルディブの友好のため日本政府が提供した支援で作られた」と消波ブロックに記した記念碑が海に向かって建っていた。
毎日新聞) - 12月28日15時32分更新

「将来起こりうる津波への対応」という巨視的計画があったのかどうかは限りなく怪しいですが(ODAを防波堤という無難な設備で消化しただけっぽい)、まあ、役に立ってよかったですねと。